2017年09月23日

海に目を向けた琉球王国

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 久米島町や糸満市の具志川城を見たとき、なぜ海岸近くの荒れ地に張り付くように城壁を築いたのだろうかと思った。敵に囲まれれば逃げ場はなく、周囲の地域を支配するにも便利とはみえない、陸地の隅だからだ。ところが、網野善彦著『日本の歴史をよみなおす』を読み終えた後、少し疑問が解けた気がした。小さな陸地ではなく海に目を向ければ、発想の転換ができ歴史を別の角度から眺められる。

 本書によれば、近代日本以前、豊かさの根源といえば、土地であり農業と考えられてきたが、農地に恵まれない海辺の歴史をひも解くと、早くから海に目が向けられ、交易や海運などで大きな富を築き豊かな暮らしをしていた。百姓=農民でなく、農地が狭い地域=貧しい地域の固定観念から脱するべきと説く。

 沖縄も石灰岩質の小さな島と見れば、貧しさしか思い浮かばないが、アジア各地につながる海に囲まれていると捉えれば、豊かさの可能性は大いに広がる。海岸近くの城も陸地の隅ではなく、海路や航行する船に向けて建てられたと考える方が自然だろう。実際、本書の中でも、海上交通との関係で琉球王国時代の城について触れられている。そういえば、世界遺産に登録されている勝連城や座喜味城も、海を近くに見渡せる場所に建てられている。
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2017年09月16日

県産本フェア始まる

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県内出版社の本を一堂に集めた「県産本フェア」が9月15日、那覇市久茂地のリブロ・リウボウブックセンター店で始まった。連休を中心に著者や出版関係者によるイベントも予定している。

書籍全体の販売量が減少傾向の中、書店が利益を確保しようとすれば、売れる本、ベストセラーにスペースをなるべく割こうとする。知名度に欠ける県内出版社の本は、店頭に置かれている場所と時間が小さくなり販売減少に拍車がかかりかねない。そうした中、今回の「県産本フェア」のように光を当ててもらえることは、貴重な機会である。

沖縄県は、基地、歴史、自然など得意なテーマを抱え、20社を優に超える出版社が活動する「出版王国」であるが、近年の出版業界の地盤沈下と無縁でいることはできない。ここ数年という期間でみても、売り上げ減少を嘆く声はあちこちから聞こえてくる。日本の伝統工芸分野では、後継者不足がよく口にされるが、沖縄の出版業界も未来が見えないのだろう、若い人の参入が少ない。

小さな活字媒体が生き残るには、思い切った転換が必要なのだろう。情報を素早く手軽に手に入れられるという面ではインターネットや映像メディアに勝てない。活字メディアは情報の質や深さで勝負しなければならないが、実行するにはそれなりの時間と資金が求められる。どうやってインターネットに負けない魅力ある本を出せるか、それを今使える時間と資金の中でどうやってまかなうか。なかなか答えは出せない。
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2017年09月10日

失われた沖縄の風景

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9月9日、沖縄県立博物館で開催されている写真展「ウィルソンが見た沖縄 ―琉球の植物研究史100年とともに―」を見た。ウィルソンとは、100年前の沖縄を写真撮影した伝説のプラント・ハンター。同日午後には、ウィルソン研究家の古居智子氏の講演会があった。

 ウィルソンが沖縄を旅した目的は植物研究であり写真の主役は植物であるが、当時の住民の暮らしや街並みも写し込まれ目をひく。特に、赤瓦や茅葺き屋根の家々が並ぶ那覇の風景は、自然と人間の暮らしが肩を寄せ合う美しさがある。10メートルは優に超えるリュウキュウマツ並木が続く宜野湾の風景も、人間が培う文化と自然が溶け合ってきた歴史を感じさせる。しかし、これらの地域は今では米軍基地に変貌している。写真の中の風景が輝きを放つほど戦争の残酷さを改めて感じつ。ほかの撮影地点も、戦火を逃れても大半が近代化の中で本来の姿を失う。

ウィルソンが使用したガラス乾板写真では数分間、露光させねばならず、構図や天候、人物の配置など相当の準備が必要だった。ウィルソンは、中国旅行中の事故がもとで足が不自由にもかかわらず、まだ交通の便の悪い沖縄に17日間滞在、重い機材を運びながら写真撮影を重ね(発見されている写真は59枚)、100種類以上に及ぶ約600点の植物標本を採取した。沖縄を含め日本は近代化を急ぎ過ぎていることを憂え、「今記録しておかなければ」という思いに駆られたといわれる。

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