2024年12月28日
沖縄の空と新基地建設
もうすぐ新年を迎えようとしているが、沖縄の空は写真のようにどんよりしている。たまたまといえばそれまでかもしれない。しかし、沖縄をめぐる安全保障はまさに曇り空であり、場合によったらすぐにでも大雨が降り注ぎそうだ。
今日(12月28日)、米軍新基地建設に伴い沖縄防衛局が名護市辺野古で軟弱地盤の改良工事に着手した。計画では地盤を強化するため建設予定地に7万本を超える砂杭を打ち込むが、軟弱地盤は最も深い部分で90メートルに達し前例のない難工事が予想される。
地盤の安定性が確保されるかどうか県や専門家から疑問が投げかけられている。防衛局が十分検証し県などに説明したとはいえない。また、新基地計画は20年以上も前に骨格が組まれたが、日本をめぐる安全保障が大きく変化する中、計画そのものを再検討する必要性を指摘する専門家の声もある。
日本全体が年始年末の休暇に入る今の時期に着工するとは、新基地建設に不利な情報・分析や資料が明らかになる前に、とにかく工事を進め既成事実化しようという印象がぬぐえない。しかも、この計画には財政状況が非常に厳しい中、1兆円近い巨費の投入が見込まれる(これは防衛省側の発表であり、1兆円を軽く超えるという試算もある)。予算面でも戦略面でも、新基地が日本の安全保障に役立つかどうか不透明な部分はさらに大きくなるようだ。
さらに、来月から始まるトランプ政権下の米国は中国とより強い対決姿勢が予想されることも、沖縄にとっては不安材料だ。岸田前政権から政府は沖縄を含め南西諸島で自衛隊配備の強化を進めてきたが、石破現政権が冷静な対応をできるかどうか、今のところは疑問符しかない。米国からの自衛隊強化の圧力に加え、中国に対して「毅然とした態度」を求める国内世論は今後、強まることはあっても弱まることはあるまい。中国と対峙する最前線の沖縄に配慮する声はほとんど聞こえてこない。
2024年12月22日
観光都市・那覇市が目指す街づくりは?
クリスマスシーズンそして年始・年末が近づき、国際通り周辺は一段と人通りが増え活気が出ているようだ。温暖な気候、独特の生活習慣・文化、琉球王国時代の歴史的遺産、懐かしい雰囲気が漂う公設市場周辺の商店街といった観光資源のおかげだろう。だが、これらはもともと沖縄が持っていたものであり観光向けにつくったものでない。観光客を呼び込むために意図的に生み出したものがどれだけあるか。
近年、牧志公設市場や農連市場が老朽化に伴って建て替えられたが、今のところ見るかぎりでは以前の賑わいを取り戻したとは思えない。あの建て替えは正しかったかどうか。何か足りなかったものはないか。日本のプロジェクトの例に多く見られるように、振り返って検証・評価する試みの声は聞こえてこない。昭和レトロのアーケード街も遠くない将来、建て替え問題に迫られよう。外国とはもちろん日本国内でも観光地の間で誘客をめぐって競争が激しくなっているだけに、総合的な街づくりの中で計画が進められることを願いたい。
2024年12月15日
中国や韓国との交流と沖縄
写真は山の手線の駅のホームから撮った中国語の看板。「知日塾」と大きな文字が書かれているが、日本語学習塾であり中国からの学生が日本の大学に入るために通うらしい。東京を訪れるたびに中国とのかかわりが深まっていることを感じる。そうしたかかわりは沖縄・那覇が中国との距離が近い分、さらに深いかもしれない。国際通り周辺のような観光地だけでなく、サンエーのような日常的な買い物の場でもほぼ毎日中国語を耳にする。中国語の自動車メーカーのCMも頻繁にテレビで流れる(これは全国レベルでも同じかもしれない)。韓国とのつながりも似た状況だろう。
しかし、政治レベルとなると、近年は中国との関係は決してよいとは言えまい。民間レベルの交流を促す雰囲気にはない。むしろ、中国と接近しようとすると、国益に反するという意味で「親中派」のレッテルが張られる。韓国とは現在の大統領が対日関係の改善に前向きだったが、弾劾裁判にかけられ政権交代の可能性が高まりつつある。野党からの候補が当選すれば反日色が濃くなり、日韓関係が一気に逆戻りするという指摘が出ている。
政府は「日米同盟の強化」を繰り返し唱えるが、中国や韓国といった周辺国との良好な関係を築けず米国ばかりに頼るのでは、米国に足元を見られかねない。特に来年から始まるトランプ政権ではその可能性が高まるだろう。沖縄の米軍基地については、米兵の犯罪や米軍機の事故から基地の環境汚染の問題まで政府は言うべきことを言えない。むしろ先回りして気を使い忖度している面も見え隠れする。米国頼りの外交政策ではその傾向は一層高まる気がしてならない。